隔年でドイツ・ミュンヘンで開催されるIAA Mobility(International Motor Show Germany)は、ドイツ国内外からOEM、サプライヤー、スタートアップが集結し、モビリティの最新のイノベーションを披露するヨーロッパ最大級の自動車業界のイベントです。
今年は、循環型経済や環境に優しい生産方法など、幅広い実践を包含する「持続可能な製造」を主要テーマとして開催されました。しかしながらその全容は、新たに注目すべき業界のトレンドにまたがるさまざまなイノベーションの展示にまで及んでいました。SBD Automotiveでは、同イベントに専門家チームを派遣し、そこで見られたモビリティ・イノベーションが短期的・長期的に消費者や車両、そしてより広範な自動車業界にどのような影響を及ぼすかについて検証したレポートを発行しました 。本記事では、2023年の同イベントにおける最新のトレンドや発表を紹介します。
持続可能な製造
一部の欧州の大手メーカーからローカルなサプライヤーまで、多くの出展者がIAA Mobility 2023の主要テーマに沿った出展を行いました。例えば、Volkswagen Groupは、チリにあるe-fuel専用の生産施設について新たな詳細を発表しました。同工場では、大気中の二酸化炭素を回収してから水と結合させる技術とプロセスを組み合わせてe-fuelを生産します。持続可能な資源を生産するだけでなく、施設自体も自然エネルギーで稼働します。Volkswagen Groupは、将来の持続可能な目標に向け、2027年にも同じ場所に工場を建設することを決定しています。
同イベントのOpen Spaceエリアでは、Audiがより持続可能な自動車ライフサイクルの創出と維持に特に焦点を当てて、持続可能な製造の実践に対するコミットメントを強調しました。同社は、ライフサイクルの最終段階に向けた新しいリサイクル手法を取り入れる計画を発表しました。この計画では、使用済みの車両から一部の材料や部品を取り出し、新車の開発や生産に再利用します。Audiこのプロセスは、例えば、自動車のバッテリーとガラスをリサイクルすることを可能にし、材料の継続的なループを開発することによって、OEMが循環型経済に貢献することを支援するものです。
イベントのコア・テーマはサプライヤーにも踏襲されており、Ascorium Industriesはスプレー式素材を展示しました。自動車のダッシュボードに使用されることを想定したこの素材は、ロボットによって塗布され、無駄を最小限に抑えることが可能な生産工程で、すでにPolestarやPorscheが活用しています。
車内外の生成AI
持続可能な製造というテーマと並んで、同イベントでは、自動車における生成AIの現在のユースケースと将来の可能性に関する大きなトレンドが見られました。ContinentalはIAA 2023の記者会見で、Google CloudとのAIに焦点を当てた新たなパートナーシップを発表しました。このパートナーシップを通じて、ContinentalはAIを自社製品に統合し、主要な車両情報にアクセスできるようにします。AIはこのデータを使って、タイヤの空気圧を正しく設定したり、最寄りの充電ステーションを探したりするなど、さまざまな情報をユーザーに提供します。
興味深いことに、同イベントのAIへの焦点は自動車にとどまらず、Replyからは組織のプロセスを合理化するために設計されたAIサービスが展示されました。AWSとの提携により実現したこのサービスは、すでにAudiが活用しており、音声コマンドを使ってAIに情報を要求することで、業界の従事者が必要な情報に素早くアクセスできるようにするというものです。AIモデル自体は、企業のファイルや文書から情報を引き出し、これらのリクエストに明確かつ包括的な方法で対応できるようにします。現在、ReplyのAIシステムは、社内文書のフローをサポートするために使用されていますが、同社は、外部ウェブサイトや会議の議事録など、他のソースからのデータを取り込むために、その範囲を拡張することができると期待しています。
現在のトレンドの将来の車両への影響
本記事でも述べた通り、2023年のIAA Mobilityイベントでは、業界の状況が技術と環境の両方の観点からどのように進化しているかについて大きな洞察を提供しました。OEMやサプライヤーは、新たな持続可能性の実践や自動車の革新的な技術へのコミットメントを果たすため、現在、これらのコミットメントのコアビジネスや生産活動への統合、AIによる組織プロセスの加速や、より持続可能な手法による自動車ライフサイクルの強化などによってさらに深化させようとしています。本記事では同イベントのトレンドの一部を抜粋して取り上げていますが、弊社が今回発行したレポートではIAA Mobility 2023におけるトレンドをより詳細かつ広範にカバーしています。
レポート本編では、同イベントの主要トレンドを掘り下げるとともに、重要な発表について解説しています。本書では、OEM各社の動向、最新の調査・研究、新製品などの分野における詳細な分析を提供し、展示・発表された革新的な技術や、パネルディスカッションなどから得られた重要なポイントについても詳しく紹介しています。それらの中には、先進的な運転モニタリングやバッテリー管理ソリューション、居住空間へと移行する車両などのエキサイティングな新コンセプトも含まれています。また、本書では、国内外のOEMが同イベントで発表した全モデルとその主な機能についてまとめるほか、同イベントにおいて見られた最も重要な動向と、それらに対して自動車業界がとるべき対応についての見解を紹介しています。