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Brandon Miller

自動車業界の最新動向:2024年第3四半期

自動車業界では日々、新しい製品の発表、戦略のアップデート、新たな買収、投資などが行われています。短期間に発表されるこれらの膨大な量の情報を把握し、自動車の将来に影響を与える可能性のあるものを見極めることは容易ではありません。

 

SBDでは過去3ヶ月の自動車業界における主要動向をまとめたレポート「市場最新動向まとめ」を発行しています。本書は、四半期ごとに主要な自動車関連分野の最新ニュースやトレンドの概要をわかりやすく、焦点を絞ってお伝えするものです。また、こうしたトレンドから、自動車業界全体への影響を分析します。本記事では、2024年第3四半期版「市場最新動向まとめ」で取り上げた最も興味深いトレンドの中からいくつかをご紹介するとともに、EV充電インフラ分野における最新動向について考察します。


EV充電インフラとその成熟度について考察する2024年度版「HERE-SBD EV Index」

最新の「2024年Q3版 市場最新動向まとめ」では 2024年版の「HERE-SBD EV Index」の内容を深掘りし、EV Indexにおける評価結果から、今後の欧州、米国、インド(2024年版で新たに追加)のEV充電インフラの展望について考察しています。

 

2023年のHERE-SBD EV Indexに続き、SBD AutomotiveではHERE Technologiesと共に、3つの主要地域におけるEV充電インフラの成長について、より深く包括的な分析を行いました。2020年から2022年までのEV市場と充電インフラの成熟度に多面的に焦点を当てた昨年のEV Indexをベースに、今年度版では、2023年から2024年までの米国、欧州、インドの充電インフラの発展を州ごと、国ごとに評価しています。

 

SBDのEVドメイン・プリンシパルであるRobert Fisherが共同で主導したこの評価では、各地域におけるEV充電構造の進化について、いくつかの興味深い知見が得られました。例えば、欧州では2023年以降、EV充電インフラの成長率が115%に達し、2024年のIndexでトップに躍り出ました。また、欧州の24カ国はEVの台数と公共充電器の数の間で良好な比率を達成しており、ノルウェーはこの地域で最も高い市場シェアを示し、デンマークは道路の長さあたりの充電ステーション数が最多でした。一方、スペインやオランダのようにEV Indexでの評価結果が低下した国では、EV充電インフラに対する強力なインセンティブ、安定した投資、政府の支援がEV普及を加速に寄与すると、SBDの専門家は結論付けています。

また今回のIndexでは、米国の充電インフラがいくつかの州で有望な伸びを示す一方で、他の州では改善の余地があることも明らかになりました。2023年以降、同地域の公共充電は82%増加しましたが、EVと公共充電器の比率が良好な水準に達しているのは4州のみでした。同地域の公共充電器の数も同様に29%増加しており、デラウェア州、テネシー州、ルイジアナ州、テキサス州がこの伸びをリードしている一方、アラスカ州、アーカンソー州、カンザス州、ネブラスカ州は道路の長さあたりの充電ステーション数で遅れをとっています。SBDの専門家は、米国におけるEVの普及率の遅れが、充電インフラ拡大の足かせとなっているとみています。最終的にEV充電インフラを成功に導くには、EV普及が限定的な段階でインフラを過剰に拡大するのではなく、普及と連動して成長させる必要があります。

 

欧州と米国に加え、2024年版 HERE-SBD EV Indexでは新たにインドを調査しています。インドでは現在、公共交通シス テムの電動化が進んでおり、同地域のOEMは二輪車と三輪車の電動化を推進しています。インドの指標の首位はチャンディーガルで、この都市のパフォーマンスは、EVの新規購入に多額のインセンティブを提供し、EV 充電インフラを整備するZEV普及計画に起因するものであるとSBDの専門家は分析しています。この指数を詳しく見ると、ラジャスタン州が0.049%と最も高いBEV普及率を達成していることがわかります。SBDの専門家は、こうした電動化の取り組みに政府の政策が積極的に関与し、インフラの普及が進めば、2030年までにインドのEV市場が世界のトップ10に入る可能性があると見ています。

 

世界のEV充電事情とAIの役割 - ウェビナーイベント

Robertは2024年版 EV Indexの開発をサポートする傍ら、HERE Technologies主催の専用ウェビナー「The State of Global EV Charging and the Role of AI(世界のEV充電動向とAIの役割)」で、その主要な調査結果についてさらに詳細に解説しました。この60分間の無料ウェビナーでは、Robertがこれらの調査結果とその意味について、HERE Technologiesの自動車業界 ソリューション担当ディレクターAndrei C. Iordache氏と議論しました。ウェビナーの録画版はこちらからご視聴いただけます。


2024年第3四半期のトップトレンド

生成AIが自動車分野に参入

複数の業界に旋風を巻き起こした生成AIは、今や自動車業界にも進出しています。2024年第二四半期には、新車にAIを組み込むOEMの数が増加しており、その多くは、独自の車載音声アシスタントの機能と範囲を拡大するためにAIを活用しています。


ステランティスはSoundHoundと提携し、一部のモデルにAI音声アシスタントChatGPTを統合する。

例えばKiaは、ChatGPTを大幅に改良したものを、新モデルEV3に搭載する音声アシスタントに組み込んでいます。この組み合わせにより、AIベースのバーチャルパーソナルアシスタントが誕生し、ユーザーの要求に応じて、旅行の計画を立てたり、さまざまな車両機能を制御したり、車載アプリにアクセスしたりできるようになっています。Stellantisも同様に、ChatGPTを車両に統合する計画を発表しましたが、そのアプローチは異なっていました。同社は音声AI企業のSoundHoundとの提携により、SoundHoundのChat AI音声アシスタントを、欧州のいくつかの市場でAlfa RomeoおよびCitroenブランドが提供する車両に統合する予定です。このアシスタントは、人間の発話パターンを収集・認識し、生成AIを活用してより自然で有益な会話を促進します。


SAE L4の取り組みが活発化

米国ではロボットタクシーの衝突事故調査が進められており、自動運転車業界は若干の後退を経験しているものの、主要プレイヤーの多くが大規模展開に向けてソリューションを前進させており、全般的には勢いを増しています。第3四半期にこの傾向が最も顕著だったのは中国で、新規参入企業がL4の競争力を際立たせる一方で、より著名な既存企業が大規模展開に近づいています。

 

そうした既存企業の一社がMercedes-Benzで、最近北京でSAE L4自動運転技術のテスト実施の認可を取得しており、中国以外の自動車ブランドとして初めてこの認可を取得したことになります。この認可を得て、同社は膨大なセンサー群(LiDAR、ミリ波レーダー、カメラを含む)を搭載した2台のS Classセダンをテスト車両として使用し、北京でL4テストを実施する計画です。

 

中国国内の自動運転車企業も前四半期に同様の進展を見せました。米中で自動運転技術を開発するPony.aiは、Toyota China およびGAC Toyotaと、投資総額10億人民元(約1億4,050万ドル)を超える新たな合弁会社を設立すると発表しました。L4自動運転車の大規模生産を推進することを目的とするこの合弁会社は、まずPony.aiの4S車両を中国市場に投入し、その後Pony.aiのロボタクシーオペレーティングプラットフォームに接続することで、中国の大都市における無人ロボタクシーサービスの開始を促進します。


SDVのさらなる提携を発表

ここ数年、新しい自動車は、搭載されるソフトウェアによってますます定義されるようになってきています。この動きはすでにバリューチェーンにディスラプションをもたらしており、ソフトウェアディファインドビークル(SDV)への移行は、新たなプレーヤーに機会を与え、従来のOEMに事業運営の再考を促すことになるでしょう。この移行をリードする競争において、SDV に特化したパートナ ーシップがグローバルに形成されつつある。この進化する状況の中で競争力を維持するために、世界の自動車業界全体で SDV に焦点を当てたパートナ ーシップが形成されつつあり、OEM とサプライヤーは、統合型のE/E プラットフォームに代わるものを開発するために R&D 投資を強化しています。

 

現代自動車と起亜自動車、サムスン電子との戦略的技術提携を発表

この四半期は、特に、Hyundai、Kia、Samsungの3社による新たなSDV提携の発表なされるなど、SDVを追求するグローバルな自動車メーカーの数が著しく増加しました。この提携により3社は、SamsungのIoTプラットフォームである「SmartThings」を通じて、将来のSDVをスマートフォンと連携させることができる新技術を開発するとしています。また、両社はオープンなエコシステムを構築し、共有された車両データを活用して便利なモビリティ体験を可能にするサービスを開発することも視野に入れています。

 

BMWグループは最近、Eclipse Foundation SDV Working Groupへの参加を通じて、SDVへのコミットメントを強化しました。同ワーキンググループは、最新の自動車向けのオープンソースソフトウェア技術に関するグローバルなコラボレーションを促進することを目的としており、現代のコンピュータのオペレーティングシステムで使用されるコードの量が、今日の自動車で使用される量を上回っていることを強調しています。BMWからは、同社の開発部門であるSoftware Factoryが、ワーキンググループのプロジェクトに積極的に貢献する予定です。


次のステップ

本記事では様々なトレンドやトピックを取り上げましたが、それらも最新レポート「市場最新動向まとめ」で深掘り分析した10件のうちの3件に過ぎません。40枚以上のスライドで構成され、無料でダウンロードいただける本書では、5Gによって実現されるサービス、電動化目標、サイバーセキュリティン関する法規制などについて最新の情報を取り上げています。本書は四半期ごとに発行し、対象となる3ヶ月間に自動車の主要な領域に影響を与えた最新のアップデート、新技術、注目すべき活動に焦点を当て、専門家による洞察を提供しています。




業界の最新動向ついてはレポート本編にて解説しています。

レポートは下記よりダウンロードいただけます。



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