Teslaの北米充電規格(NACS)が、多くの自動車メーカーに広く採用されつつあります。この変化は充電サービスを拡充する上でいくつかのメリットをもたらします。
最近、SAEもNACSコネクターの標準規格(SAE J3400)を発表し、メーカーに対し相互運用性を明確化しています。
今回のSBD Exploresでは、なぜNACSが採用されているのか、そしてEVコネクターの展望はどうなるのかについて掘り下げていきます。
同分野における動向
Teslaは独自のコネクタの仕様と設計を発表し、北米充電規格(NACS)という名称でこれを採用しました。同時に、スーパーチャージャーネットワークを他の自動車メーカーにも開放することについて検討を始めました。これにより、多くの企業がNACSコネクターへの切り替えを検討するようになりました。
自動車メーカーはNACSコネクターへの切り替えを検討する一方で、厳格な第三者規格がないため、相互運用性と性能に懸念が生じていました。
これを受けてSAEは6月、2023年末までにNACSの標準規格を策定すると発表しました。
2023年10月、ChargePointがNACSコネクターを搭載した充電器を発売しています。同社はその意向を数ヶ月前の発表において示していました。
12月、SAEはNACSの規格をSAE J3400として発表しました。
なぜ、それが重要なのか?
Teslaは世界最大の充電設備を有しています。同社のシステムを活用して機能を実装することにより、OEMに重要なアドバンテージがもたらされます。
NACSを導入することで、OEMはオーナーが利用できる充電ポイントをほぼ2倍に増やすことが可能です。これは、ユーザージャーニーをサポートし、航続距離への不安を軽減する上において鍵となります。
Teslaの充電ネットワークは、世界で最も信頼できるネットワークのひとつです。空き状況とライブステータスは正確で、オーナーがどのステーションに行くかを選択する際に役立ちます。Tesla以外の充電ステーションの多くが信頼性の問題にしばしば直面しているアメリカでは、これは非常に重要なことです。
またこの採用により、充電プロバイダーにも重要な影響が及びます。充電プロバイダーは、NACS以外のコネクター(CCS、J1772、CHAdeMO)を使用している既存の顧客を疎外しないようにしながら、NACSへの切り替え方法を戦略的に決定しなければなりません。
OEMは、切り替えが行われる前に、EV購入者をサポートする方法を決定する必要があります。NACSからCCS/J1772への接続を可能にするアダプターを車両購入時に同梱する必要があります。
コネクターはCCSと同じ規格を使用しているため、NACSへの移行がサイバーセキュリティに影響を与えることはありません。
今後の展望
ほとんどのOEMは、早ければ2024年および2025年にNACSコネクター対応車を発売すると発表しています。NACSに対応する車両の発売が増加するの同時に、いくつかの重要な事象が起こることが予想されます。
充電ポイント事業者は、NACSコネクタも提供しなければならなくなるでしょう。CHAdeMOコネクタを持つ充電ポイントは、CHAdeMOが新車で提供されなくなったため、NACSに置き換えるのに最も適したポジションにいると言えます。NACSとCCS/J1772の両方を提供することで、市場の大半の互換性が確保されるでしょう。
OEMは、この移行の最中にEVを採用する人々の顧客体験を考慮する必要があります。消費者は、OEMがCCSとNACSの両方との互換性を可能にするアダプターを提供することを期待する可能性があります。
いずれは法律でNACSコネクターの使用が義務付けられる可能性があります。
最終的に自動車メーカーがアダプターを提供することはなくなり、ドライバーは自動車メーカーあるいはサードパーティからアダプターを購入する必要が出てくるでしょう。これは アップルが3.5mmヘッドフォンジャックを廃止し、ライトニングポートアダプターを期間限定で提供した時と類似した状況です。
すでに多くのOEMがNACSの採用を発表しており、先日のSAE規格の発表に続き、さらに多くのメーカーが採用することになると見られます。
充電プロバイダーは、NACSをサポートするためにコネクターを拡張するか交換しなければなりません。
OEM各社は、2024年および2025年にNACS対応車を発売すると発表しています。これは、OEMがこの技術を導入する際に抱いていた多くの懸念を解決する最近のSAE規格によって裏付けられています。
NACS / SAE J3400は北米のすべての乗用車で採用されると見られます。すべてのOEMがこのコネクターに対応する車両を出荷し、すべての充電ポイントがこのコネクターをサポートすることになるでしょう。
注視すべきこととは?
EVのエコシステムは複雑で、今後数年間で監視すべき要素が複数存在します。
800Vの車両アーキテクチャは増加傾向にあり、システム電圧は将来も上昇し続ける可能性があります。NACSは1000Vまで対応可能である者の、将来のアーキテクチャ(特に商用車)ではメガワット充電システム(MCS)のような他のコネクタが必要になるかもしれません。
OEMがスーパーチャージャーステーションでシームレスな充電を可能にするには、Teslaとの契約が必要です。各契約の詳細は現時点では不明ですが、車両、ユーザー、充電セッションのデータ送信が含まれる可能性があります。
日本の充電インフラは未だかなり限られており、世界的にシェアを大きく落としているCHAdeMOコネクターに依存しているため、NACS採用の重要な市場となる可能性があります。
Teslaの市場シェアが大きく、充電インフラが拡大しているオーストラリアも、注目すべき市場のひとつだと言えるでしょう。しかしながら、米国とは異なり、オーストラリアでは敷地内への3相電力ネットワークが好まれるため、単相NACSコネクターの有用性は限定的です。
とるべき対応
Evaluate
NACSを採用することが自社にどのような利益をもたらすかを評価
Design
NACSの設計をシステムに組み込む。将来のEV充電仕様(800Vなど)に対応できるよう、システムの将来性を確保する。
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