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SBD Explores:有効なOTA(Over-the-Air)アップデート戦略の基盤を確立

クリストファー・ワトソン




OTA(Over-the-Airアップデート)とは、リモートで車両に新しいソフトウェアをインストールする方法です。OTAアップデートは、問題の解決や車両ソフトウェアのユーザーエクスペリエンスの向上に使用することが可能です。


米国では2018年初頭、5ブランド33モデルがOTA機能を搭載していました。2023年後半には、23ブランド、約309モデルがOTA機能を備えています。これは、OTA機能を持つモデルが10%の時点から、5年未満で90%まで増加したことになります。


OTA の利用拡大については、SBD Automotiveでも追跡調査を行っており、先ごろ、OTAアップデートに関する新たなデータを盛り込んだレポート「OTA及びソフトウェアアップデートによる機能提供の最新動向ガイド」を発行しています。この新たなデータでは、OEMが個々のOTAをどのように活用しているかを示しています。また、OTAの発行頻度や最も一般的なOTAの種類も提示しています。


今回のSBD Explores では、OEMによるOTAの取り組みがどのようにOEMの組織的な適性を判断するのに役立つのか、また、車両モデル内のどのドメインが関連しているのかを考察します。


同分野における動向

自動車のソフトウェアディファインド化が進むのに伴い、ソフトウェアの問題が発生するリスクが高まります。ソフトウェアの問題は、ネガティブなユーザーエクスペリエンスにつながるとともに、安全性に影響を与える可能性があります。このため、ソフトウェアのアップデートを迅速に実施する必要があります。

  • もともとOTAアップデートは、車両をディーラーに戻すことなく、OEMがソフトウェアの問題に直接対処できるようにするために開発されています。ディーラーの訪問はOEMにとって高額なコストがかかる可能性がありますが、OTAアップデートはより利便性が高く、コスト削減の可能性があります。

  • 2012年以降、下のグラフに示されているように、ソフトウェアに関連するリコールの数は増加しています。リコールは正式なプロセスであり、OTAはこの目的のみに使用されるわけではないものの、このデータと全体的な傾向は、OTA機能の必要性が高まっていることを示すものと言えるでしょう。

  • SBDのレポート「OTA及びソフトウェアアップデートによる機能提供の最新動向ガイド」では、OTAアップデートに影響を与える要因に関する洞察に加え、 OTAアップデートの広範な使用とサービスとしての機能の実装に適応するためのOEMの指標を示しています。


なぜ、それが重要なのか?

OTAはもともと、車両で見つかった問題を解決するコストを削減するために開発されています。複数のドメインが接続された車両では、車両の異なる領域の問題をOTAで解決することが可能です。

  • 2023年米国では、デジタルコックピットとインフォテインメントの領域でOEMによるOTAが最も多く実施されました。インフォテインメント領域は安全性に関連する機能ではないため、テストが少なくて済みます。またアップデートを受信可能な車両モデムは、多くの場合インフォテインメントシステムにリンクされています。

  • パワートレインや乗員の安全のためにOTAを使用することは、当初の設計以上に車両を変更する可能性があるため、規制の影響を受ける可能性がります。このため、一部の規制当局では、OEMが自社で所有しない車両ソフトウェアのアップデートを許可すべきかどうかを検討しています。

  • 組織には、OTAを迅速に開発する「適性」がなければなりません。そのためには、OTAが誤って複数のドメインに影響を及ぼさないようにするための強固な検証手順が必要です。OEMは、他のドメインへの意図しない影響を軽減する必要があります。

  • アップデートの意義 高い: ADAS および Passenger Safety ドメインに関連するアップデート。 : パワートレイン、サイバーセキュリティ、快適性に関するアップデート。 : バグフィックス、インフォテインメント、マイナーアップデート



今後の展望

OEMによる過去のOTAアップデートの頻度とアップデート可能なドメインの数は、OEMの組織とドメイン接続戦略の指標となります。これらは、OEMの市場ポジションを決定するベンチマークとして使用することが可能です。

  • OEM各社の過去と現在のOTA戦略を検証することは、ベンチマークに役立つだけでなく、将来の修正に対処するための能力を評価するのにも役立ちます。

  • OEM各社は、従来の組織構造、製造アプローチ、製品戦略の影響により、異なるスピードでOTA機能を進化させていくと予想されます。

  • OEMは、無線でアップデート可能なドメインの数を増やすとともに、効果的な検証および妥当性確認による堅牢な展開プロセスの開発にも注力すべきです。

  • OTAアップデートの目標は、組織レベルで確立されなければなりません。長期的には、どのドメインがアップデート可能になるかを検討する必要があります。この可変性は、適応可能な価格戦略の必要性を示しています。

  • SBDの「OTA及びソフトウェアアップデートによる機能提供の最新動向ガイド」では、最新のOTAとOEM戦略について詳しく解説しています。 Features as a Serviceを提供するOEMとその価格戦略についても掲載しています。


  1. 自動車業界のOTAは、車両をディーラーに持ち込むことなくソフトウェアの修正を実施する方法として導入されました。主要なOEMは、新しいインフォテインメントやADASの機能にOTAを使用するレベルまで進んでいます。

  2. OTAアップデート機能は今後も他の車両ドメインに拡張される可能性が高いと予想されており、ADASが最もその可能性が高いと見られます。ADASの機能はOTAアップデートで拡張できます。例えば、ADASの機能に定義された最高速度をOTA アップデートで引き上げることが可能です。

  3. OTAの使用について世界的に統一されたアプローチを確立することにより、規制システムに影響を与えるOTAの処理について、OEMに確実性を与えることになります。これにより、OTAをより柔軟にに実施でき、OTAの幅広い活用が可能になります。

  4. 一部のOEMはすでに特定のドメインでFaaSを統合しているが、ほとんどの地域ではまだ主流にはなっていません。SBDでは、OEMの能力が変化すると予想しており、アップデートを無線で他のドメイン、さらにFaaSに拡張すると見ています。


注目すべきは?

一部のFaaSは、購入時に車両にダウンロードされます。OEMは、FaaSの早期導入企業やその価格戦略を監視する必要があります。

  • 規格標準化機関および型式承認機関:OTAの展開プロセスを遅らせる可能性があります。まず、OTAが型式承認に影響するかどうかを判断する必要があり、証拠の提出が必要となります。もしそうであれば、テストが必要となります。これには時間を要し、OTAのリリースを妨げる可能性があります。

  • 中国のOEM は一貫して、OTAをリリースできる立場にあり、FaaSをビジネスモデルに組み込んでいます。OTAに関する中国OEMの動向についての詳細は、SBDのレポート「OTA及びソフトウェアアップデートによる機能提供の最新動向ガイド」で解説しています。

  • OEMは、OTA を提供するために社内組織や開発プロセスを調整し、FaaS を提供し始めています。SBDでは、自動車全体でOTA機能を搭載するモデルが市場に増えていくと予測しています。


とるべき対応

Evaluate

OTAアップデートとサービスの導入から生まれる課題と機会を評価


Optimize

OTAアップデートを頻繁に提供できるようにするための組織体制


Improve

OTAのアップデートやサービスに対応するためにサイバーセキュリティ対策を修正し採用


詳細に関するお問い合わせ

SBD Automotiveではカスタムプロジェクトを通じて、クライアントが新たな課題や機会へ取り組むことを支援しています。 OTAアップデートおよび Features-as-a-Serviceに関連する最近のプロジェクトに関する詳細や、その他ご要望についてはSBD Automotiveジャパン(Postbox@sbdautomotive.com)までお問い合わせください。



 

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