今日、多くのOEMが、最新モデルにますます多くの技術を搭載し、ソフトウェアディファインドビークルの実現に向けた取り組みを強化しています。しかしながら、こうした新型モデルで重要となっているこれらの技術の成功は、シームレスで満足のいくユーザーエクスペリエンス(UX)を提供できるかどうかにかかっています。OEM、開発者、サプライヤーにとって、これを達成することが、製品のローンチを成功させ、車両とそのデジタルサービスのエコシステムに対する長期的な顧客ロイヤリティを育成するための鍵となります。
SBD Automotiveが発行する車載HMI UXベンチマーク評価レポートシリーズでは、HMI機能が車載ユーザーエクスペリエンスにどのような影響を及ぼすかをプラスとマイナスの両面から調査しています。SBDのベストセラーかつロングランレポートの1つである本レポートは、グローバルに提供されている最新のHMIシステムを包括的な分析・評価を行っています。2024年は、6車種のシステムを対象とし、SBDのUX専門チームがテストおよびベンチマークを行うことで、誰がこの分野をリードし、誰が遅れをとっているのかを明らかにします。
2024年7月に日本語版を発行したMercedes-Benz EクラスUXベンチマーク評価レポートに続き、今回のインサイトでは、Xiaomi SU7について深く掘り下げたシリーズ最新レポートについて紹介します。同車両のIVIおよびUXについて概説するとともに、新型EVの最も興味深いテクノロジーがもたらす長所と短所、それらがエンドユーザーエクスペリエンスに与える影響について分析します。また、SBDジャパンでは7月25日にレポート「UXベンチマーク評価 - Xiaomi SU7」の概要や活用のメリット等についてご紹介に関する無料セミナーを開催します。詳細・お申し込みはこちら(https://attendee.gotowebinar.com/register/6006245434806478165)
Xiaomi SU7の詳細
SU7のユーザーエクスペリエンスの中心は、16.1インチ3Kセンターコンソール、56インチHUD、7.1インチ回転式ダッシュボード、タブレット端末用シートバック延長マウント2つを組み合わせたXiaomi独自のインフォテイメントシステム「Xiaomi EV Smart Cabin」です。これらのディスプレイとシステムを駆動させるのが、AIコンピューティング能力を活用して最大30兆回/秒の演算(TOPS)を処理する車載チップ、Snapdragon 8295です。
Xiaomiの車載OSは、スマートフォンとのクロスデバイス接続を提供すると一方で、Xiaomiのタブレットアプリケーションシステムを含め、主流のアプリケーションもアプリライブラリに統合しています。Xiaomiでは、同社のIVIシステムが、このエコシステム全体に現在存在する5,000以上のアプリケーションをサポートする予定だとしています。
ハードウェアの統合という点では、SU7は1000を超えるXiaomiのスマートホームデバイスをサポートし、自動検出、パスワード不要のアクセス、自動化シナリオの設定などの機能を可能にします。車内ではピンポイント拡張接続も提供され、さまざまなデバイスのプラグアンドプレイ機能をサポートします。さらに、CarPlay、iPadやiPadアクセサリーの取り付け、リアエクステンションマウント上のアプリケーションによって、さらなるサポートが提供されます。
主なポイント
SBDのUX専門チームがXiaomi EV Smart Cabinで提供されるテクノロジーをテストしたところ、システムのスマートフォン統合機能に独自の優位性があることが明らかになりました。SU7はCarPlayをネイティブにサポートする一方で、Xiaomiブランドのモバイルデバイスとペアリングした場合に、そのスマートフォン統合機能は特に優れていると評価されました。
このペアリングはスマートフォンのミラーリングを可能にするだけでなく、ユーザーがダウンロードしたアプリを「ウィジェット」としIVI上でアクセス可能とするほか、スマートフォンから車への同期されたナビゲーションのインタラクションを促進します。UX専門チームでは、外部デバイスをXiaomi EV Smart Cabinに接続するシームレスなエクスペリエンスにより、アプリのエコシステムとハードウェアリソースが共有され、全体的なユーザーエクスペリエンスが向上すると評価しました。また、この強化は通常、単一のデバイスだけでは実現できないということも強調しています。この統合は、Xiaomiのテクノロジーエコシステムにすでに投資している(Xiaomiブランドのスマートフォンやタブレットを所有している)顧客にとっては特に有用ですが、Xiaomiの携帯電話やそのサブブランドのデバイスを所有していないユーザーにとっては利便性が低くなる可能性があります。
専門家チームは、Xiaomiの既存のスマートフォンのエコシステムとEVの組み合わせを高く評価したものの、SU7に重要な基本的機能が一部欠けていることを発見しました。これらの多くはEVのラジオやADASといった機能に関連するもので、総合的なベンチマークや評価においてマイナス要因となりました。そうした例としては、ユーザーがお気に入りのAMまたはFMラジオ局を保存して素早くアクセスできないことなどが挙げられます。中国ではインターネットラジオが人気ですが、専門家チームは、ユーザーがAM/FMラジオを最新の自動車に搭載されているべき基本的機能と考えるだろうと見ています。
重要度の低い基本的機能の問題の中には、SU7の入力方法が限定的であることや、適切なADASラベルの欠如、ACCまたはPDシステム作動中のヘッドウェイ表示の欠如がありました。UX専門チームでは、XiaomiがOTAアップデートを通じてこうした問題を解決した場合、SU7は、SBDがこれまでにベンチマーク評価を実施し高く評価した Jeep Grand Wagoneerや 新型Mercedes-Benz E-Classよりもより高いUXスコアを達成できるとしています。しかしながら最終的には、このシステムは、Xiaomiのコンシューマーエレクトロニクスの知識を現代のIVIとインフォテインメントシナリオに応用していることを示す一方、基本的な機能体験と、より高度なデライト機能を提供することについて、同社が従来のOEMから学ぶ必要性を浮き彫りにしている、とチームは結論づけています。
分析
SU7のインフォテインメントシステムを深く掘り下げてテストることで、専門チームは、その数々の先進技術を通じてSU7が提供するユーザーエクスペリエンスについて、さらなる洞察を得ました。
こうした技術の1つに、音声認識システムでより人間に近いインタラクションを可能にするためにXiaomiがSU7に統合した大規模言語モデル(LLM)があります。このAIベースの統合により、ユーザーはより速くより高い精度でタスクを完了することができるため、多くのユーザーへのアピールになると専門チームでは考えています。この機能のテスト中、UXチームは、特にLLMを利用していない類似の音声認識システムと比較して、LLMを介して処理された音声リクエストによって提供される応答の深さに感銘を受けました。
SU7のスマートフォン統合機能をさらに掘り下げると、特定の層のユーザーエクスペリエンス全体に影響を与える可能性のある潜在的な欠点が明らかになりました。これらの機能は、車とXiaomiブランドのスマートフォンとの接続に大きく依存するため、Xiaomi以外のデバイスと車両を接続する際に提供される体験は、限定的なものとなります。例えば、このシステムは、中国の大手家電ブランドであるHuaweiやHONOR製の携帯電話には対応していません。SU7の包括的なスマートフォン統合機能を自社のエコシステムに限定することで、Xiaomiは自社の携帯電話や、これらの機能をフルに発揮できる互換性のあるスマートフォンを直接所有していないSU7の顧客を失望させる可能性があります。ただし、SU7は中国地域で発売されたばかりであるため、この問題が一部の消費者のEV購入意欲を大きく削ぐような要因になるかどうかはまだわかりません。
次のステップ
本記事で紹介したように、新型Xiaomi SU7は、ソフトウェアを中心とし、スマートフォンに焦点を当てた、さまざまなHMI機能を提供しており、その一部は中国市場の類似製品を凌駕しています。同EVのテストと分析に際し、専門チームは、Xiaomi EV Smart CabinのXiaomiエコシステムとの深い統合とそのネイティブなAI機能を評価する一方で、この統合をサードパーティのスマートフォンに開放することで、その魅力をさらに広げることができること、またOTAを活用することで、Xiaomiの基本的機能の欠如という問題を解決することができることを指摘しています。本記事でご紹介した情報は、レポート「UXベンチマーク評価 - Xiaomi SU7」本編でまとめる評価のごく一部にすぎません。
150ページを超えるレポート本編では、ADAS 、インフォテインメント、ナビゲーション、音声認識など、いくつかの重要な領域にわたる同車両の機能ユーザーエクスペリエンスについて、さらに深い洞察を提供しています。本書では、これらの特徴や機能をSBDの評価手法に照らして採点するとともに、2023年HMI UXレポートシリーズで評価した車両や、2024年版HMI UXレポートでレビューした他の車両に照らし、SU7をより広範にベンチマークしています。
SBDのUXベンチマーク評価レポートシリーズでは、最新の車載HMIソリューション、そのエンドユーザーへの影響、どの車両が最も優れたユーザーエクスペリエンスを提供しているのかについて、専門家チームが包括的な評価を実施しまとめています。
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