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今日の技術トレンドは、明日の車載ユーザーエクスペリエンスにどのような影響を与えるのか?

近年、車内におけるテクノロジーの役割は飛躍的に拡大し、短期間で車室内のほぼすべての機能領域に影響を及ぼしてきました。自動車業界がソフトウェアディファインドビークル (SDV)への移行を加速させる中、車内ユーザーエクスペリエンス全体におけるこれらのテクノロジーの重要性は、今後さらに高まると考えられます。

 

しかしながらその成功は、シームレスで満足度の高い方法で体験を提供できるかどうかにかかっています。したがって、SDVの実現と長期的なカスタマーロイヤルティの確保を目指すOEMにとって、今日の車内テクノロジーの多様な役割や責任、そしてそれらが体験をどのように拡張・向上させるかを深く理解することが不可欠です。

 

先日の 「UXベンチマーク評価レポートシリーズ」についての記事に続き、今回はその姉妹レポートである「UX実現技術調査シリーズ」についてご紹介します。この新シリーズでは、SBD AutomotiveのUXベンチマーク評価シリーズで評価したモデルで提供されているコネクテッド機能や技術に焦点を当て、UXをさらに深堀りし検証します。スマートフォンのコンパニオンアプリおよびハンズオフドライビングシステムに焦点を当てた最新版レポートシリーズからのいくつかの重要なポイントとともに、入手方法等についても併せてご紹介します。


キーポイント1:車両コンパニオンアプリの現状と今後の可能性

より広範な業界トレンドと同様に、SBDの専門家は車両コンパニオンアプリの将来に可能性を見出しており、今後数年間は、機能セット、ユーザーエクスペリエンス、コミュニケーションの3要素が鍵を握る、コンパニオンアプリにとって重要な変革期になると強調しています。しかし現状では、多くのアプリが必要不可欠な基本的機能を欠き、一貫性のないUXを提供し、コミュニケーション面で課題を抱えているなど、SBDの専門家だけでなくそれらを使用する消費者も、これらアプリは期待に沿うものではないと感じています。

 

これらのアプリを向上させ、その可能性を最大限に引き出すために必要な変化は、急速に台頭しつつある業界のトレンド、すなわち「第3の空間」としての自動車によってもたらされる可能性があります。車両メーカー各社では、車両を家庭や職場の延長として捉え直す動きが加速しており、乗員にとっては自動運転技術によって自由な時間が増え、車内のコネクテッド機能やサービスとより直接的に関わることが可能となります。このように車内外の境界が曖昧になる未来において、SBDの専門家は、家庭、自動車、スマートシティやライフスタイルサービスなどユーザーの日常生活に不可欠となるようなサービスなどをシームレスに統合する橋渡し役として、コンパニオンアプリが極めて重要な役割を果たすと見ています。

 

しかし、このような未来を実現するためには、OEMがコンパニオンアプリの合理化を進めつつ、差別化を優先することが求められます。これにより自動車メーカーは、コンパニオンアプリの進化が続く中で競争力を維持することが可能となります。SBDの専門家は、コンパニオンアプリが今後も自動車購入時の付加価値として位置づけられる一方で、車両が家電やスマートシティを含む広範なエコシステムとより密接に結びつくにつれ、OEMにとってますます重要な検討事項になると結論づけています。


キーポイント2:ペインポイントとしてのPaK(Phone as a Key)

Polestarのアプリで提供されているPaK(Phone as a Key)の例を挙げると、SBDのUXチームが指摘した現在のコンパニオンアプリの課題は、PaK機能の実装にありました。この実装は、他の多くの実装と同様、Bluetooth Low Energy(BLE)に依存しており、テスト期間中に信頼性やサポートの不足が明らかになりました。さらに、信頼性は使用するスマートフォンの種類や、PaKを通じて制御される車種によっても異なりました。また、このPaKの実装は、Polestarアプリが開いていない時などに機能が作動しないことがあり、評価を下げる要因となりました。

SBD Automotive645aレポートより引用:UXを実現する技術シリーズ:コンパニオンアプリ
SBD Automotive645aレポートより引用:UXを実現する技術シリーズ:コンパニオンアプリ

BLEの採用に関して、SBDの専門家は、ユーザーのスマートフォンでBluetoothが無効になっている場合、PolestarのPaKは使用できず、そのことをユーザーに認識させるプロンプトやヒントも提供されないことを確認しました。またPolestarのPaKの導入を通じてこのペインポイントを実証する一方で、同様の問題がPolestarのオーナーだけでなく、TeslaやFordオーナーにも生じていることが明らかになりました。


こうしたことを踏まえ、SBDの専門家は、現在あるいは将来の自動車ラインアップに独自のソリューションを導入しようとする自動車メーカーに対して、次の3つの提言を行っています。1つ目は、PaKを新たに導入する場合、従来のキーフォブと同等の信頼性を確保し、幅広いユーザー層からの信頼を醸成・浸透させること。2つ目は、PaKが導入された際には、あらゆる自動車サイバーセキュリティの脅威から確実に保護する高水準のエンド・ツー・エンド・セキュリティを提供すること。最後に、モバイルデバイスのバッテリーが切れても機能するようにすること。SBDの専門家は、スマートフォンがこの機能を提供できない場合に備え、スマートウォッチやスマートリングのようなバックアップデバイスを統合し、ユーザーが車両のロックを解除できるようにすることを推奨しています。


結論

前述のような課題が依然として新たなコンパニオンアプリのUXにマイナスの影響を及ぼしているものの、改善への取り組みによって、今後数年間でこれらのアプリの機運は急速に高まるとSBDの専門家チームは予測しています。その変化の兆しは、自動車業界と家電業界との融合が進む中ですでに見られ、これがSDVへの移行をさらに加速させる要因になると指摘しています。このトレンドは、これまでコンパニオンアプリやハンズオフドライビングシステムを取り上げてきたUX実現技術調査シリーズにインスピレーションを与えた数多くのトレンドのうちの1つです。

 

2025年には、このシリーズにさらに新たに2つの調査レポート「UX ベンチマーク評価:EVのナビ機能」、「UX ベンチマーク評価:EVの公共充電」を追加します。これらのレポートでは、UX専門チームが収集した客観的なテストデータをもとに、ケーススタディを通じてEVナビゲーションと公共充電の最前線を探ります。また、それぞれの技術がさまざまなユースケースでシームレスなユーザー体験を提供するためのベストプラクティスや斬新なアプローチを紹介します。さらに、SBDの専門家が、シームレスな体験を確保し、顧客満足度を向上させるための具体的な提言を提示し、EVナビゲーションおよび公共充電ソリューションの全体的なユーザー体験の向上を支援します。



 

SBDでは、現代の車載ユーザー体験を支える最新テクノロジーについて、専門家チームが包括的な評価を実施しています。UX実現技術調査シリーズの詳細や購読方法については下記よりお問い合わせください。

 




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