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Robert Fisher

世界各国の消費者に向けてEVユーザーエクスペリエンスをさらに最適化するには


より多くの自動車メーカーが幅広い層にアピールするために様々な新型EVを展開し、各国政府がEVインフラを支援・開発するための法規制面、財政面での施策を導入する一方で、消費者はEVそのものだけでなく、EVのジャーニーについてもさらに理解を深めています。


しかしながら、EV市場における進化にもかかわらず、消費者が最終的にEVに関する情報を入手するソースは質にばらつきや偏りがあり、EVや電動化全体に対する考え方に違いが生まれています。政府およびOEMは、EV生産能力の増強や消費者の電動化へのシフトを促す新たなイニシアチブの支援を通じて電動化を推進していますが、最終消費者の考え方がどのように異なるのか、なぜ異なるのか、EVのさらなる普及を促進するためにEVに関する誤解にどのように取り組むことができるのか、EVのカスタマージャーニー全体を通じて肯定的な態度をどのように維持できるのかを理解することが重要です。

新しい EVジャーニーの最適化は、EU、米国、中国の1,600人以上のドライバーを対象とした包括的なグローバルEV調査を通じて、これらの領域とそれ以上に関する洞察を提供している。本記事では、2020年に実施した前回のグローバルEV調査以降、EVに対する消費者の態度がどのように変化したかを評価しながら、本調査の最も興味深く驚くべき結果を紹介する。


2023年におけるEV普及の障壁と促進要因


前回の調査以降、EV普及の障壁となり得る懸念点が増加しています。特に、EVのバッテリー生産にかかる環境コストに関する報道の増加により、消費者はEVの環境メリットの正当性について懸念を強めています。特に欧米市場の成熟に伴って、環境問題への懸念は短期的には高まる可能性が高いものの、バッテリー技術と持続可能性の向上により、中長期的には全体的な懸念が軽減されるとSBDでは見ています。


これ以外に2020年から2023年にかけて増加した重要な障壁は、車載テクノロジーに関する懸念で、期待するテクノロジーをミックスしたEVを消費者が見つけることができていないということを示唆しています。この懸念の多くは、より未成熟な米国市場の回答者から寄せられたものです。市場が成熟し、より幅広い技術を搭載したモデルが登場するのに伴い、こうした懸念は減少していくと予想されます。


一方、米国の消費者が主導するシフトの中で、いくつかの懸念事項に顕著な減少が見られました。最も劇的に減少したのは、充電ステーションの不足に対する懸念でした。これは、税金が投入された大規模なNational Electric Vehicle Infrastructure(NEVI)プログラムにより、簡単にアクセスできる公共の急速充電器の数が急速に増加したことで、国民の認識が高まったためと思われます。また、SBDの調査によると、米国の消費者のEVの初期費用に対する懸念は3年前と比べて低くなっていることがわかっています。


EV vs ICE


環境への影響は、消費者にとって重要な懸念であると同時に、欧米におけるEV購入を動機づけるトップ要因であり、中国では僅差で2番目に大きな要因となっています。ICEに比べて維持費が低いことや、走行音の静かさ、性能の向上など、その他のEVの特徴も、3地域すべてで消費者が重要な動機と捉えています。


環境への配慮が動機づけにも懸念にもなるという事実は、消費者の集団的意思決定プロセスにおけるパラドックスを表しています。今回の調査では、環境への配慮が動機づけになると考える回答者は、懸念や障壁になると考える回答者の約3倍に上りました。このことは、EVがいまだ一般的には環境面で肯定的に捉えられていることを示唆していますが、EV生産の実態がマスメディアから注目されるようになるのに伴い、否定的な意見が短期的に強まることが予想されます。多くの自動車メーカーやバッテリーメーカーは、すでに自社製品の二酸化炭素排出量を削減するための取り組みを積極的に行っていますが、こうした複雑で高価な取り組みは、消費者にはあまり知られていません。


消費者の環境意識の高まりを受け、OEMは二酸化炭素排出量を削減する努力を積極的に発信し、自動車が環境に与える影響について透明性のあるデータを公表する必要があります。VolvoおよびPolestarの両ブランドは、従来のICE車よりも電気自動車を選択した場合の効果を明確に説明する、消費者向けのライフサイクル分析で業界をリードしてきました。



公共充電ネットワークの現状


SBDの今回の調査で最も驚くべき結果は、公共の充電ネットワークに関するEVドライバーの意識でした。SBDでは、利用可能な充電器の数、ステーションの信頼性、使いやすさ、場所の見つけやすさなど、充電ネットワークのさまざまな特徴について回答者に尋ねました。マスメディアでしばしば報道される内容とは異なり、結果的には充電ネットワークのすべての特徴について圧倒的に肯定的な回答を得ました。最も肯定的だったのはアメリカの回答者、次いで中国、そしてヨーロッパの順となりました。平均では、充電ネットワークに否定的な印象を持ったドライバーは10%未満でした。


世界的に充電ステーションへの投資がもっと必要であることは間違いない一方で、この調査結果は、平均的なドライバーにとっては現状で十分、あるいは満足できるものであることを示唆しています。もちろん、現在のEVドライバーはアーリーアダプター、あるいは少なくともアーリーマジョリティであり、その結果、電気ライフスタイルに関するマイナス面に対して寛容である可能性に留意しなければなりません。

EV充電に関する報道が圧倒的に否定的なのは、平均的な充電セッションの現実とは対照的に、特定の事例を反映している可能性が高い。しかし、これらの問題、特に可用性と信頼性に関する問題を解決することは、自動車を運転する人々の幅広い大多数による採用を可能にするために必要である。同時に、充電ステーションの計画と配備には1~2年かかることもあるため、産業界と政府は市場の状況についてかなり前から計画を立てておくことが重要である。ここで、堅牢なバックエンドシステムと耐久性のあるモジュール式機器を配備することで、今日の投資の価値を最大化することができる。



EVにおけるユーザーエクスペリエンスの最適化


環境への影響が引き続きEV普及の主要な動機であることや、今日のEVドライバーが充電インフラをより好意的に受け止めていることなどから、消費者の間でEVに対する認識が高まりつつある一方で、自動車メーカーも政府も、EVの普及を達成するためには、こうした消費者意識をレイトマジョリティ層やラガード層の消費者にも広げていく必要があります。しかしながら消費者にとっては、EVの購入はEV体験の最初のステップに過ぎず、OEMは世界各国の消費者のニーズや要望を総合的に満たすような方法を考慮しなければなりません。そうしたニーズや要望について、SBDのレポート「EVにおけるユーザーエクスペリエンスの最適化」では詳説しています。


本書では、消費者調査を通じてEV所有に対する意識を理解し、消費者の認識とEV普及の双方を高めるために、EV体験を最適化するためのベストプラクティスを示しています。また、消費者がEVのカスタマージャーニーをどのように捉えているかを定量的、分析的に深く掘り下げるとともに、EVの枠を超え、EV所有体験全体を通じてドライバーをサポートするコンパニオンアプリや充電ソリューションに対する消費者の意識の評価も行っています。



EVの購入決定から使用終了まで、ライフサイクルの各段階における消費者動向についてはSBDのレポート「EVにおけるユーザーエクスペリエンスの最適化」で詳説しています。



 

消費者に焦点を当てたリサーチとコンサルティング・サービスの詳細にご興味のある方は、下記までご連絡ください。 info@sbdautomotive.com.


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