2023年、米国自動車業界大手の不安定化を危惧する労働組合のストライキがあっても、EVは自動車業界のスポットライトを浴び続けている。Ford 、GM 、疎外感を募らせる労働者をなだめようと努力している。 彼らは電気自動車へのコミットメントを倍増させているようだ。.しかし、本当にそうなのだろうか?
Ford ジム・ファーリー社長はCBSの取材に対し、「海岸沿いのアーリーアダプターはもういない。しかし、YahooFinanceは次のように報じている。 Ford は、現在のEV製造への120億ドルの投資を一時停止している。米国のEV購入者は、ガス車やハイブリッド車よりもEVにプレミアムを支払うことに消極的で、EVの価格と収益性を圧迫しているとしている。
一方、automotivedive.comによると、GM 、2023年第1四半期は記録的な高水準となり、第3四半期も同様の高水準となったが、成長は期待通りではないようだ。 GMのEV生産台数は第2四半期から第3四半期にかけて40%増加したが、EV販売は28%増にとどまった。そのためOEMは、予想よりも需要が低いとして、EVの生産目標を引き下げることを決定した。
EVの生産スケジュールの遅れ、販売台数、EVメーカーの大規模な戦略転換などによる混乱の中、EVの在庫と販売に何が起きているのかを指し示す明確なデータはあるのでしょうか。
SBD Automotive では、この動向を継続的にモニタリングしています。当社のデータツール「VehiclePlannerPro」におけるVINデータは、車両がディーラー在庫に示される期間とその販売時期を判断するのに役立ちます。何十万台ものEVから得られたこのデータは、マシンおよび人間の両方の専門技術によって整理、品質テストされており、多くの自動車メーカーのお客様にご利用いただいています。
当社では、米国におけるEVの正確な状況を示すために、EVの総販売台数、EVに買い手がつくまでディーラーに置かれる期間(Days on Lot、ロット日数)、ディーラーのEV在庫供給台数という、3つ主要データを使用します。本記事では、2020年第4四半期から2023年第2四半期までの四半期別データをご紹介します。
米国のEV販売台数は成長トレンドを反映
分析期間中のEV販売台数は増加したものの、2022年第4四半期に本格的に普及するまでは、何度か失敗を繰り返しています。多くの人にとって、この傾向はEVの「主流への移行」を告げるものです。
GM のような一部のブランドは、加速するEV供給に対して販売台数が伸びていないことを指摘していますが、これがEV販売の状況を示していると考えるべきではありません。
しかしながら最近のニュースでは、販売台数の伸びが大幅に鈍化しており、全体的な販売台数は、EV擁護派が望むような成長トレンドを反映するものにならない可能性が指摘されています。
SBDのデータによれば、私たちが変曲点にいることは間違いありませんが、その結果は不透明です。それについては後で詳しく説明します。
EVもガソリン車も、買い手がつくまでの間在庫に置かれる
本記事では、米国で販売されているいくつかのブランドにおけるEVの販売速度について明確な情報を提供したいと考えています。この分析では、EVの買い手がつくまでにディーラーに置かれていた日数を示す変数として、EVの「Days-on-Lot」(DOL、ロット日数)を分析します。なお、Teslaやその他のEV専用自動車メーカーの販売データは入手可能ですが、この分析で統計的に有意となるにはサンプルサイズが十分であるとは言えません。これは、Tesla、Rivian、Polestarなどのグループが、顧客に直接販売するケースが多いためであると考えられます。
上のグラフは、一般的なトレンドに関連するいくつかの興味深い洞察を示しています。参考までに、SBDのデータセットから生成されたEVの平均DOLは51日でした。これと比較し、 iSeeCars.comの調査によると、2023年7月時点での新車販売には平均48.2日を要します。
2020年12月から2021年6月にかけて、DOLは全体的に減少しました。7月に入り、DOLは全体的に平均を下回り続けているように見えます。この傾向は2021年10月まで続き、その後2022年初頭までほとんどのブランドが平均を下回りました。
2022年の5月、6月、7月には、ほとんどのEVがDOLを大幅に短縮していたものの、この傾向は7月にピークを迎え、その後2022年の9月までは先細りとなっています。
2022年8月にはインフレ抑制法(Inflation Reduction Act)が施行され税金の還付に変更があったという点もここに書き加えておきます。
2022年10月には、販売可能なEVが流入してこの傾向が逆転し、DOLは平均値を急激に上回りました。この傾向は今回の分析の残りの期間中も続きますが、DOLの全体的な上昇は徐々に鈍化し始め、2023年6月にはほとんどのブランドで平均値に近いバランスポイントに達しました。
では、OEM別にデータを掘り下げて見てみましょう。なお、グラフ上部の凡例をクリックすることでブランドの選択・解除が可能です。
2020年12月から2021年6月までの間、FordのEV在庫は、全体的なDOLの減少傾向には従わず、2021年11月になりようやく平均を下回っています。
一方GMは、51日という平均DOL日数を上回り続けた数少ないブランドのひとつです。KiaおよびHyundaiは、MINIおよびJaguarとともに、DOLを一貫して下回るブランドとしてリードしています。
2022年10月の逆転現象では、FordのDOLが他のブランドより長期間平均を下回りました。一方、メインストリームブランドのKiaおよびHyundaiは、最も早く売れるEVから、一夜にして売れるまでに最も時間のかかるEVとなりました。IRAは、これらブランドの軌跡の変化の主な原因の1つであり、特にHyundai Groupは大きな打撃を受けたと思われます。
同じ期間に、Porsche、Mercedes-Benz 、BMWといった高級車ブランドは、いずれもDOL期間が大幅に長くなっています。
注記:このデータセットは2023年6月までのデータを反映していますが、SBDのデータは最新の自動車販売データをカバーしています。
2023年第2四半期、EV在庫がかつてない水準に増加
このグラフは、前述と同じ分析期間中にディーラーで販売されたVIN番号を追跡したものです。高コストのEVと、より低価格なEVを比較するために、プレミアムブランドとメインストリームブランドに分けています。
上記チャートに示す調査結果によると、ディーラーで販売されているEVの台数は、全体としてほぼ一定しています。異なるブランドやモデルが時系列に沿って異なる時期に市場に参入している一方で、全体的な供給は驚くほど一貫していました。
プレミアムブランドは当初、メインストリームブランドよりも多くの車両を市場に投入していました。しかしながら、2021年3月までに起きた供給シフトにより、メインストリームブランドが米国市場に多くのEVを投入し始めました。6月までに、プレミアムEVのディーラー在庫は最低値となり、その後しばらく低水準で推移、2022年第3四半期半ばまでに以前の水準まで回復しています。この傾向は継続し、2023年3月にはプレミアムEVの供給台数が3万台近くに達し、最高値を記録しました。プレミアムEVの台数は徐々に減少しているものの、これが供給によるものなのか需要によるものなのかは定かではありません。
メインストリームブランドは2021年第2四半期に販売店でのEV保有台数が1万台に達し、2023年第2四半期までその水準を維持しましたが、6月に販売店でのEV保有台数が急増し2万台近くに達しました。2022年6月から2023年3月までの間には、EV供給がやや増加する傾向で推移する一方で、いくつかの下降と修正が起きています。しかしながら、EVの供給量が4月の2万台から3倍に増加し、6月にはディーラーに6万台以上のEVが並ぶという新たなトレンドが出現しました。EVの供給は減少傾向にあるようだが、EVが供給されすぎているか、EVの需要に影響を与える何かが変化しているかのどちらかであると考えられます。
EV革命は予測より遅いペースで続く
EVの販売台数については、継続して増加傾向にあるものの、すべてのブランドがそうだというわけではありません。SBDでは、Ford やGM のようなレガシー自動車メーカーが、人々が買いたいと思うような製品を提供しながら、EV市場に効率的にスケールアップするのに最も苦労すると考えています。現在、FordおよびGMは、EVを製造するたびに赤字を出しています。一方Teslaは、販売するモデルごとに利益を上げています。また、GMはCAFE(COrporate Average Fuel Efficiency)基準を達成できないため、Teslaからクレジットを購入せざるを得ない状況にあることも注目すべき点と言えます。
EVが主流となるにはいまだ時間がかかると見られます。「Verge」誌の記事では、「アーリーアダプターはすでに導入している」と指摘し、購入者へのインセンティブはあるが、それを受けることは必ずしも簡単ではなく、またすべての車両に適用されるとは限らないと述べています。さらに、こうしたインセンティブや税制優遇措置の状況は、政府の政策立案者によって突然変更される可能性があることも指摘しておかなければなりません。また、2023年第2四半期の平均的なEVのDOLが51日であり、その一年前には販売までの期間がより速かったことを指摘する人もいるかもしれません。しかしながら、7月の新車販売(ICEとEVを含む)も50日前後に減速しているため、この問題はEVに特化した問題というよりも、米国の自動車市場全般の問題である可能性があります。
さらに、EV購入者に影響を与え得る要因として、クレジットの利用可能性の低下、ローンのサービシング金利の上昇、迫り来る不況などが挙げられます。さらに、EVの保険料がガソリン車より平均26%高額であること、EVのリセールバリューが相対的に低いことなどから、一部の消費者がEV革命に消極的となることは容易に想像できます。
しなしながら現時点まで、EVは世界中で驚異的な成長を遂げ、政府から多額の補助金を受け続けてきたことは事実であり、さらに北米の充電インフラをめぐる問題は、連邦政府が高速充電ステーションの新設に75億ドルの資金を提供したことで、徐々に解決に向かっているようです。
EV悲観者も擁護者も、パワートレインの進化の方向性について今後議論を続けると見られますが、技術革命の性質上、このような市場の変動は予想されることだとSBDでは考えています。EVの成長は、勝者と敗者を分かちながら、今後数年間続くでしょう。さらに、一般的な金融・経済情勢がその成長に大きな役割を果たすと予想されます。アメリカの主流層がEV普及に舵を切るのはいつになるのか、今のところその答えは出ていません。
VehiclePlannerProおよびこの分析をサポートするために使用されるEVデータの詳細については、次の連絡先までお問い合わせください。 benjaminmarz@sbdautomotive.com.